
蟹山昇宏税理士事務所(大阪・本町)が解説します。
個人事業主はいくらから法人化すべき?利益800万円超が目安の根拠と節税シミュレーション
法人化(法人成り)とは、個人事業主として営んできた事業を、株式会社・合同会社などの法人に切り替えることです。税金の仕組みが変わるだけでなく、役員報酬・社宅・退職金といった節税の選択肢が広がります。
こんな悩みをお持ちではないでしょうか。
- 「利益が増えてきたけど、いつ法人化すればいいのか正直わからない」
- 「税金が高くなってきた。法人にすると本当に得になるのか」
- 「社会保険料の負担増を考えると、法人化してトクなのか不安」
結論からお伝えします。年間の所得(利益)が800万円を超えたら法人化を本格検討してください。所得税率が23%から33%へ跳ね上がり、役員報酬・社宅・退職金などの法人メリットがコストを上回るタイミングだからです。
本記事でわかること
- 利益いくらから法人化を検討すべきか(目安の根拠)
- 個人 vs 法人の税・社会保険料負担を利益額別に比較(社保込み・令和8年度税制基準)
- 業種別・状況別の判断基準
- 法人化後の節税手段(役員報酬・社宅・退職金)
- 実際の法人化手続きの流れとコスト
本記事の執筆事務所
蟹山昇宏税理士事務所(近畿税理士会・登録番号138494号)
代表税理士は近畿大学大学院で所得税法を担当
大阪市中央区安土町3-4-5 本丸田ビル4F(本町駅徒歩3分)
freee公式4つの認定資格を取得した(5つ星・リアルタイム記帳・会計上級エキスパート・人事労務エキスパート)大阪府内わずか8事務所(3.69%)
bixider認定事務所・認定経営革新等支援機関
顧問契約先40社・freee導入支援実績120社以上(顧問外含む)
今すぐご相談したい方へ
すでに法人化を検討されている方は、こちらから直接ご相談いただけます。事業の状況をお聞かせいただければ、初回のオンライン面談で「いつ・どんな形で法人化すべきか」を具体的にお伝えします。
法人化の目安は「利益800万円超」——その根拠をシンプルに解説
個人事業主が法人化を検討すべき目安は、年間の所得(利益)が800万円を超えたタイミングです。所得税率が大きく跳ね上がり、法人格を持つことで使える節税手段が一気に広がります。
「利益800万円」という数字は、当事務所が顧問契約先40社・freee導入支援実績120社以上(顧問外含む)への相談対応を通じて導いた実務上の判断基準です。なぜ売上ではなく利益で判断するのか、そして800万円という数字の正体は何なのかを、順を追って解説します。
売上ではなく「利益」で判断する理由
法人化すべきかどうかを考えるとき、「売上がいくらになったら」と考える方が多くいます。しかし、それは正確ではありません。税金の負担を左右するのは売上ではなく「利益(所得)」だからです。
業種によって利益率は大きく異なります。IT・WEB系フリーランスの利益率は60〜70%程度になることが多い一方、飲食業では5〜10%にとどまるケースも珍しくありません(中小企業実態基本調査参照)。
たとえば売上3,000万円であっても、飲食業なら利益は150〜300万円程度です。この水準なら法人化を焦る必要はありません。一方でITエンジニアやWEBデザイナーが売上3,000万円を達成すれば、利益は1,800〜2,100万円に達する可能性があります。このような場合は法人化の節税効果が非常に大きくなります。
800万円という数字の正体——所得税率の壁
所得税は「超過累進課税」の仕組みを採っています。所得が増えるほど税率が段階的に上がる制度です。所得税法第89条第1項に定める超過累進税率によると、課税所得の税率は次のとおりです(令和8年度税制改正で税率区分の変更なし)。
- 330万円以下: 10%
- 330万円超〜695万円以下: 20%
- 695万円超〜900万円以下: 23%
- 900万円超〜1,800万円以下: 33%
- 1,800万円超〜4,000万円以下: 40%
- 4,000万円超: 45%
ここに住民税10%が加わります。課税所得が900万円を超えると、所得税だけで33%の税率が適用されます。住民税と合わせると実質的な税負担率は43%に達します。
個人事業主の場合、課税所得は「売上 − 経費 − 青色申告特別控除(最大65万円)− 基礎控除(62万円※)」で計算します。
※所得税法第86条(令和8年度税制改正)により基礎控除の本則が62万円に改正(旧48万円)。さらに令和8年・令和9年分は合計所得489万円以下の場合に特例として42万円が加算され、最大104万円の基礎控除が適用されます(特例期間: 令和8・9年分)。なお、令和9年分以降は青色申告特別控除が65万円から75万円に引き上げられる予定です(令和8年度税制改正大綱・2025年12月26日閣議決定。e-Tax申告+電子帳簿保存が条件)。
年間利益(事業所得)が800万円台に乗ると、課税所得が900万円の壁に近づきます。このタイミングで節税手段を持つ法人格の有効性が高まります。
当事務所の試算では、利益800万円の個人事業主が支払う税・社会保険料の年間合計は約294万円です(所得税94万円+住民税69万円+個人事業税22万円+国民健康保険料109万円・2026年4月基準・大阪市在住・e-Tax青色申告者の場合)。同じ利益水準で法人化し、役員報酬を最適に設定すると約270万円程度に圧縮できます(当事務所試算・概算)。
「売上1,000万円の消費税」は別の話
「売上が1,000万円を超えたから法人化しなければ」と相談に来られる方もいます。しかし消費税の課税判定と法人化の節税効果は、別軸で考える必要があります。
消費税は売上が1,000万円を超えた翌々年から課税事業者になります(消費税法第9条)。インボイス制度に登録済みであれば、すでに消費税を納付しているはずです。なお、インボイス未登録の取引先からの仕入れについては、消費税法附則第52条・第53条の経過措置として2026年9月30日まで仕入側で80%の仕入税額控除が認められていましたが、2026年10月1日以降は70%に縮小されます(2028年10月以降50%、2030年10月以降30%と段階的に縮小)。この場合、消費税の基準だけで法人化を急ぐ必要はありません。
法人化を検討する本質的な理由は「所得税率の壁」と「法人だけが使える節税手段」にあります。まず利益水準を確認することが先決です。
当事務所は顧問契約先40社・freee導入支援実績120社以上(顧問外含む)の実績があり、法人化の相談を年間数十件受けています。「法人化すべきか迷っている」という段階のご相談が最も多く、早い段階でのご相談が節税効果を最大化するカギです。
利益別シミュレーション——1,000万円・2,000万円の場合
利益1,000万円の個人事業主は、社会保険料込みで比較しても法人化で年54万円〜の節税効果が見込める場合があります(当事務所試算・概算・令和8年度税制基準)。
「法人にすると節税できると聞いたけど、社会保険料が増えるのでは?」という不安は当然です。所得税・住民税だけでなく社会保険料まで含めた実質的な負担を比較してみましょう。
以下の表は、個人事業主と法人化後の税・社会保険料負担を利益額別に比較したものです(概算・2026年4月基準)。
| 年間利益(所得) | 個人事業主の税・社保負担合計 | 法人化後の税・社保負担合計 | 実質節税効果の目安 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 約130万円 | 約135〜145万円 | なし(法人コスト高) |
| 800万円 | 約294万円 | 約270万円 | 年24万円〜 |
| 1,000万円 | 約371万円 | 約317万円 | 年54万円〜 |
| 1,500万円 | 約615万円 | 約431万円 | 年184万円〜 |
| 2,000万円 | 約860万円 | 約602万円 | 年258万円〜 |
(上記は概算です。所得税・住民税・個人事業税・社会保険料〔法人化後は厚生年金・協会けんぽ大阪〕・国民健康保険料をすべて含む2026年4月基準の試算です。役員報酬月50万円設定・e-Tax青色申告・大阪市在住・40〜64歳前提・大阪市国保上限109万円を前提としています。業種・家族構成・役員報酬設定によって実際の数値は異なります。正確な試算は税理士にご相談ください〔当事務所試算〕。)
この表は所得税・住民税・個人事業税・社会保険料の合計を比較したものです。法人化後は役員報酬に対して給与所得控除が適用されるため、個人課税よりも税率が有利になります。利益が大きいほど、その差は拡大します。
社会保険料の増加を忘れずに
法人化すると、代表者は健康保険・厚生年金に強制加入となります。国民健康保険から社会保険に切り替わることで、保険料が増加するケースがほとんどです。
役員報酬月50万円(年600万円)の設定を例にとると、協会けんぽ大阪の2026年度保険料率(健康保険10.13%・介護保険1.62%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.3%)に基づく本人負担の社会保険料は年間約91万円となります(当事務所試算)。個人事業主時代の国民健康保険料・国民年金と比較して、収入水準によっては増加することがあります。ただし社会保険は将来の年金受給額にも影響します。単純に「コストが増える」とだけ捉えるのではなく、生涯収支で考えることが大切です。
役員報酬の最適化で節税を最大化する
法人化後の節税の要(かなめ)は役員報酬の設定にあります。法人の利益をすべて役員報酬として代表者に支払うのではなく、法人に一定の利益を残しつつ役員報酬を最適額に設定することで、個人と法人の税率格差を最大限に活かせます。
たとえば年間利益2,000万円の場合、役員報酬を年1,200万円(月100万円)に設定すると、個人の課税所得は給与所得控除を差し引いた水準に抑えられます。残った利益800万円は法人に留保し、法人税率(中小法人は最大23.2%。ただし800万円以下の部分には租税特別措置法第42条の3の2により15%の軽減税率が適用されます。この措置は令和8年度税制改正で2027年3月31日開始事業年度まで延長されました。なお2026年4月以降、法人税額が500万円を超える法人には防衛特別法人税として超過分に4%の付加税が課されますが、課税所得が2,400万円以下の中小法人は実質的な負担が生じません)で課税されます。個人所得税の最高税率45%と比較すると、法人に利益を残すほうが有利です。
役員退職金の活用も大きな節税手段です。法人成りから将来的に退職金を支払う設計を最初から組み込むことで、長期的な節税効果がさらに高まります。
資産運用・不動産収入がある場合の注意点
個人事業の利益に加えて、不動産収入・株式運用益・副業収入などがある場合、法人化のメリット計算は一段と複雑になります。
たとえば不動産収入が年間500万円ある個人事業主が事業所得も800万円稼いでいる場合、合算した課税所得は1,300万円以上になります。このケースでは法人化の恩恵が非常に大きくなります。一方で不動産を法人名義にするかどうかや、個人と法人の間でどのように所得を分散するかは、税理士との個別シミュレーションが欠かせません。
業種別・状況別——こんな場合は800万円未満でも法人化を検討する
利益800万円未満でも、BtoB取引・採用強化・信用力向上が事業の成長ボトルネックになっているなら、早期の法人化が有効な選択肢になります。
📋 自分の業種・状況だと、法人化はどうすべき?
業種・利益規模・将来構想によって最適な判断は変わります。「うちの場合は?」を具体的に知りたい方は、ページ末尾の相談フォームから状況をお聞かせください。個別に判断材料をお伝えします。
税負担の観点だけが法人化の理由ではありません。取引先・採用・資金調達といった「信用力」の問題で法人化を決断するケースも、当事務所への相談では数多くあります。
BtoB・大手企業取引が多い業種(IT・WEB制作・製造)
IT・WEB制作・製造業でBtoBの取引が中心の方は、「個人事業主には発注できない」という取引慣行が壁になることがあります。大手企業や上場企業の多くは、与信管理の観点から法人としか取引しない方針を採っています。
freee株式会社公式サイトの事例記事(https://adv.freee.co.jp/case/kaniyama-2025・2024年取材)で紹介されている当事務所の支援事例でも、WEB制作会社が取引先の拡大を契機に法人化し、freee導入で経理を自動化した結果、事業規模を大きく伸ばしたパターンが紹介されています。
利益が800万円に届いていなくても、受注できる案件の規模や取引先の選択肢が広がるなら、法人化の投資対効果は十分にあります。
アフィリエイター・YouTuber・フリーランスの法人化目安
広告収益やアフィリエイト収益を主な収入源としている方は、経費が少なく利益率が高い傾向があります。売上の大半が純粋な利益になりやすいため、所得税率の壁に当たるタイミングが早く来ます。
「アフィリエイト 法人化 目安」を検索される方の多くは、年収(売上)700〜800万円台で所得税の重さを感じ始めた段階です。経費となる仕入れや外注費がほとんどない場合、売上≒利益に近くなるため、法人化の目安は800万円よりも早い500〜600万円台に下がることがあります。
YouTuberやフリーランスのエンジニアも同様です。経費が少ない分だけ課税所得が高くなりやすく、所得税の累進課税の影響を受けやすい業態です。早めに税理士に相談して、法人化のタイミングをシミュレーションすることをおすすめします。
従業員を雇用したい・社会保険を整備したい場合
事業拡大に伴い人を雇いたい場合、法人格の有無は採用力に直結します。求人票を出す際、「個人事業主」と「株式会社」では応募者の印象が大きく異なります。特に正社員採用では、社会保険が完備されているかどうかを確認する求職者が多いのが現状です。
個人事業主でも5人以上の従業員がいる場合、業種によっては社会保険の強制加入義務が生じます。いずれ社会保険を整備するなら、法人化と同時に制度設計をすることで、余計なコストや手続きの重複を避けられます。
また金融機関からの融資を受ける際も、法人格は信用力の証明になります。日本政策金融公庫の融資や民間銀行の創業融資を検討しているなら、法人化のタイミングを融資申請と合わせて設計することが効果的です。
法人化のベストタイミング——いつが最も節税効果が高いか
法人化のタイミングは、利益が800万円を超えた直後の「決算月前3か月以内」に着手するのが最も効果的です。
設立月の選択は消費税の免除期間や役員報酬の最適化に直結するため、慎重な検討が必要です。
「思い立ったらすぐ」というわけにはいかないのが法人化です。設立のタイミングを間違えると節税効果が半年分以上消えてしまうこともあります。最初から税理士と戦略を組み立てることが大切です。
年度内に法人を設立するメリット
個人事業の課税所得が大きく膨らんでいる年に法人を設立すると、年度の途中から役員報酬を取ることで個人事業の利益を圧縮できます。ただし、個人事業と法人の両方が存在する期間の税務処理は複雑になるため、税理士への相談が必須です。
設立月を選ぶ際の重要な視点は「消費税の免除期間を最大化する」ことです。消費税法第9条の2に基づき、法人設立後、原則として2期分(最長2年間)は消費税が免除されます。たとえば売上が安定して伸びている場合、1月に設立するよりも11月や12月に設立して「短い初年度 + 満1年の2年目」という形で免除期間を設計するほうが有利なケースがあります。
法人化前に済ませるべき3つの準備
法人化に向けて必ず事前に決めておくべき事項が3つあります。これを後回しにすると、設立後に修正できない「取り返しのつかないミス」になりかねません。
- 税理士と事前シミュレーション(役員報酬額・設立月の決定)——利益水準・家族構成・事業計画をもとに、最適な役員報酬額と設立月を決めます。この設計なしに進めると節税効果が半減します。
- 役員報酬額の決定(法人化後12か月変更不可のルール)——役員報酬は法人税法第34条第1項第1号に定める「定期同額給与」として毎月同額を支払う必要があります。一度設定すると原則として事業年度中の変更は認められません。最初の設定が極めて重要です。
- 定款・登記費用の準備(最低18〜24万円)——株式会社の場合、定款認証費用(約5万円)・登録免許税(15万円)・印紙代などを合わせて20万円前後が必要です。合同会社なら登録免許税6万円と定款作成費用で、合計10万円程度に抑えられます。
法人化にかかる費用と時間の目安
法人設立にかかる費用は、法人の種類によって異なります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 15万円(最低額) | 6万円(最低額) |
| 定款認証費用(公証人役場) | 約5万円 | 不要 |
| 定款の電子化・印紙代 | 電子定款なら不要 | 電子定款なら不要 |
| 合計目安 | 約20〜24万円〜 | 約6〜10万円〜 |
| 登記完了までの期間 | 2〜4週間 | 2〜3週間 |
登記完了後、税務署・都道府県・市区町村への各種届出を2週間以内に行う必要があります。法人口座の開設や社会保険の手続きも含めると、実際に事業を法人として動かせるようになるまで1か月程度を見込んでおくと安心です。
法人化後の節税——役員報酬・社宅・退職金でここまで変わる
法人化後の節税効果は、役員報酬・社宅・退職金の3つを組み合わせることで最大化できます。個人事業主には使えないこの3つの手段が、法人化の本質的なメリットです。
「法人にするだけで節税になる」というイメージを持たれている方は多いのですが、実際には「法人格を活かした設計」をしなければ節税効果は出ません。どの手段をどの順番で組み合わせるかが重要です。
役員報酬の分散で税率を下げる
法人の利益を代表者一人に集中させると、個人の課税所得が高くなり所得税が重くなります。そこで活用できるのが「役員報酬の分散」です。
配偶者を役員として登記し、役員報酬を分散させることで、世帯全体の税負担を下げられます。個人事業主時代の「青色事業専従者給与」と似た発想ですが、法人の役員報酬には上限がなく、また社会保険の対象になることで将来の年金受給額も増やせるメリットがあります。
令和8年度税制改正で「年収の壁」が103万円から178万円(年収665万円以下の特例)に引き上げられました(特例期間: 令和8・9年分)。配偶者を役員に就任させて年収178万円までの役員報酬を支払えば、配偶者側の所得税・住民税負担を抑えつつ法人の所得を分散できます(所得税法第83条・第84条)。
数値で示すと、代表者が役員報酬を月50万円(年600万円)に設定した場合、所得税法第28条第3項・同法別表第五により給与所得控除として年間164万円が適用されます(年収600万円×20%+44万円=164万円。令和8年度税制改正で計算式に変更なし)。
また令和8年・令和9年分の役員報酬年600万円の場合、給与所得436万円(給与所得控除164万円差引後)は合計所得489万円以下の特例対象となります。所得税法第86条特例により基礎控除が104万円(本則62万円+特例42万円)となり、課税所得は332万円に圧縮されます(旧法では基礎控除48万円→課税所得388万円。令和8年改正で約56万円の課税所得圧縮。特例期間: 令和8・9年分)。この控除は個人事業主の青色申告特別控除(最大65万円)よりも大きく、課税対象となる所得を大幅に圧縮できます。
社宅制度で家賃の大半を経費化
法人を使った節税の中で、即効性が高いのが社宅制度です。個人で家賃15万円を支払っている場合、法人が物件を借り上げて代表者を入居させ、代表者は会社に低額の賃料(法定家賃)を支払う形にします。
この「法定家賃」は法人税基本通達9-8-8に計算方法が定められており、実際の家賃の10〜20%程度になることが多いです。つまり家賃の80〜90%を法人の経費として計上できます。年間家賃が180万円であれば、144〜162万円が経費になる計算です。
ただし物件の規模(床面積・固定資産税評価額)によって計算方法が変わるため、設計前に税理士への確認が必要です。
退職金は最大の節税手段
法人化から長期的に見た場合、最も節税効果が大きいのは役員退職金です。個人事業主時代には退職金という概念はありませんが、法人なら代表者が将来退任する際に退職金を支払い、その全額を法人の損金(経費)にできます。
退職金を受け取る側(代表者個人)にも、「退職所得控除」という大きな控除が適用されます(所得税法第30条第3項)。勤続年数20年超の場合、退職所得控除は800万円 + 70万円×(勤続年数−20年)で計算されます。法人成りから30年後に退職金3,000万円を受け取ると、退職所得控除は1,500万円(800万円 + 70万円×10年)、課税対象は(3,000万円 − 1,500万円)÷ 2 = 750万円まで圧縮されます(当事務所試算)。
なお令和8年度税制改正(2026年1月1日施行)により、退職所得控除の調整期間が5年から10年に延長されました(所得税法第30条第5項)。役員退職金とiDeCoを組み合わせる場合、iDeCo受取後10年以上空けてから退職金を受給しないと控除額が減額されます。法人化時から受給設計を行う場合はページ末尾の相談フォームからお問い合わせください。
同じ3,000万円を給与として毎年受け取っていた場合と比較すると、退職金方式の節税効果は非常に大きくなります。また法人保険を活用して退職金の原資を積み立てる方法もあります(保険の節税活用については最新の通達をご確認ください)。
freee公式4つの認定資格を取得した(5つ星・リアルタイム記帳・会計上級エキスパート・人事労務エキスパート)取得事務所として、当事務所は大阪府217事務所中8事務所(3.69%)・全国2,327事務所中69事務所(2.97%)という水準の認定を受けています。法人化前後の節税設計から経理の仕組みづくりまで、一貫してサポートします。
節税対策についてより詳しく知りたい方は、大阪の中小企業向け節税対策15選もあわせてご覧ください。
経営計画見える化プランの顧問契約詳細についても、あわせてご参照ください。
freeeで法人化後の経理を自動化した2つの実例
法人化後の経理が自動化できなければ、節税メリットを活かしきれません。当事務所が支援した2社の実例を紹介します。
💬 「自分のケース」を確かめてみる
事例で進め方のイメージは掴めても、自分の事業構造に当てはめると判断が変わることもあります。初回30分のオンライン面談で、具体的にお伝えします。話してみて違ったら、そこで終わって構いません。
法人化に成功した経営者の多くが口にするのは「経理の手間が増えた」という声です。個人事業主時代より決算書類が複雑になり、会計処理の量も増えます。この課題を解決するのがfreee会計を使った経理の自動化です。
事例1: 製造業A社(年商1億円台・従業員20名台)
(注: 本事例は実際の相談事例をもとに構成した参考事例。固有情報は匿名化しています)
大阪府内の製造業A社は、法人化後も経理体制が追いつかず、月次決算が常に3か月遅れという状況でした。「今月の資金繰りが月末まで把握できない」という状態が続き、銀行への報告資料の作成にも毎回時間がかかっていました。
当事務所がfreee会計の導入を支援した結果、次のような改善が実現しました。
- 経理担当者の作業工数が月20時間削減
- 月次決算が翌月15日に完了(3か月遅れが解消)
- 3か月先の資金繰りをリアルタイムで可視化
- 追加融資3,000万円の獲得に成功
freee株式会社公式サイトに掲載された当事務所の支援事例(2024年取材)では、製造業クライアントが月次決算を翌月15日に完了させ、3か月先の資金繰り可視化と追加融資3,000万円を実現しました。(出典: https://adv.freee.co.jp/case/kaniyama-2025・2024年取材)
資金繰りが見えるようになったことで、社長が安心して設備投資の意思決定をできるようになりました。「数字で経営を動かす」感覚を初めて実感できたとおっしゃっていました。
事例2: WEB制作・Webマーケティング会社(年商5,000万〜8,000万円・匿名)
(注: 本事例は実際の相談事例をもとに構成した参考事例。固有情報は匿名化しています)
大阪市内のWEB制作・Webマーケティング会社の代表は、個人事業主として年商が5,000万円を超えた段階で「税負担と経理作業が限界」という状況に陥っていました。売上の伸びに反して手取りが思うように増えず、確定申告の作業に毎年2か月近くを費やしていたといいます。
当事務所で法人成り+freee会計の導入を並行して支援した結果、以下の変化が生まれました。
- 年商6,000万円・事業利益1,200万円の段階で法人化を実施
- 役員報酬・社宅制度・家族役員を組み合わせた節税設計を構築
- 社会保険料の増加分(年間約60万円)を差し引いた実質節税効果: 年80〜130万円(2026年4月基準・社会保険料込み・当事務所試算・概算)
- freee導入で経理の自動化が進み、月次決算を翌月10日に完了
- 経営者がクライアント対応に集中できる時間を月30時間以上確保
(注: 節税額は役員報酬の設定・家族構成・社会保険料の水準によって個人差があります。上記は当事務所の試算値です。実際の節税効果は税理士による個別シミュレーションでご確認ください)
「法人化して経理が楽になるとは思っていなかった。freeeがあるから経営に集中できる」というのが、この代表からいただいたフィードバックです。
法人化後にfreeeを選ぶ3つの理由
当事務所がfreeeを推奨するのには明確な理由があります。
- 銀行・クレジットカードの自動仕訳で経理の手間を大幅に削減——法人口座とfreeeを連携すると、日々の入出金が自動で仕訳されます。月次の帳簿作業が数時間から数十分に短縮されるケースも珍しくありません。
- 月次試算表をリアルタイムで確認できる——「今月の利益はいくらか」「資金はあと何か月持つか」をスマートフォンで確認できます。経営判断のスピードが上がります。
- 顧問税理士と画面共有で即時コミュニケーション可能——当事務所はfreeeの画面を共有しながらオンラインで月次報告を行います。移動時間ゼロで、経営課題を早期に発見できます。
freee会計の導入支援について詳しくは、freee会計の導入支援サービス詳細をご覧ください。
法人化の手続き——設立からfreee移行までのロードマップ
法人化の手続きは、設立登記から税務署届出・freee移行まで通常2〜4週間で完了します。ただし事前のシミュレーションと設計に時間をかけることが成功のカギです。
「法人化の手続きが複雑そうで踏み出せない」という声をよく聞きます。実際の手順はシンプルですが、各ステップで専門知識が求められます。当事務所では設立から届出・freee移行まで一貫してサポートしています。
- Step 1: 税理士と事前シミュレーション(役員報酬額・設立月を決定)——所要期間: 約1週間。利益水準・事業計画・家族構成をもとに、最適な設立スキームを設計します。
- Step 2: 定款作成・公証人役場での認証(株式会社の場合)——所要期間: 約3〜5日。電子定款を利用すると印紙代4万円が不要になります。
- Step 3: 法務局への登記申請と登記完了——所要期間: 約1〜2週間。申請から登記完了まで法務局の審査期間があります。
- Step 4: 税務署・都道府県・市区町村へ各種届出の提出——所要期間: 登記後2週間以内。「法人設立届出書」「青色申告承認申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを提出します。
- Step 5: 法人口座開設・freee会計の法人アカウント移行——所要期間: 随時(口座開設に2〜4週間かかるケースが多い)。freeeの個人アカウントから法人アカウントへの移行設定を行います。
株式会社 vs 合同会社——どちらを選ぶべきか
法人化にあたってまず迷うのが「株式会社にするか合同会社にするか」という選択です。3つの軸で比較します。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立コスト | 約20〜24万円〜 | 約6〜10万円〜 |
| 社会的な信用力 | 高い(大手取引先・採用に有利) | やや低い(個人認知が強い業種は問題なし) |
| 経営の自由度 | 定款変更に株主総会が必要 | 定款変更が比較的自由 |
| 将来のIPO(上場) | 可能 | 不可 |
| おすすめの業種・状況 | 大手取引先・採用強化・将来的な事業拡大 | コスト重視・個人ブランドが強い・BtoC中心 |
大手企業との取引や正社員採用を重視するなら株式会社が有利です。コストを最小限に抑えたい場合や、フリーランスの個人ブランドを活かしたビジネスモデルなら合同会社も選択肢になります。
税理士に依頼するメリットと費用の目安
法人化後の税務・経理を税理士に依頼するメリットは、節税設計から月次決算まで一貫したサポートを受けられることです。当事務所の料金の目安は以下のとおりです。
- 顧問料: 当事務所のメインプランは月額40,000〜80,000円帯(決算料は標準で250,000〜350,000円帯)です。freeeを完全に使いこなしている新設法人など最小構成の場合は 月額25,000円〜・決算料180,000円〜 からご対応もあります。前任税理士から切り替えると料金が上がる場合がありますが、その分、月次の数字の見える化と経営判断のパートナーとしての価値を提供します。
- スポット相談: 初回30分 11,000円(税込・2回目以降60分 22,000円・税込)
- 初回のオンライン面談: 30分・無料(詳細・条件はページ末尾の相談フォームからお問い合わせください)
(注: 記帳代行・給与計算・年末調整は別途オプション(個別見積)となります)
料金の詳細は顧問料・決算料の全額料金表でご確認ください。
当事務所との顧問契約は、月次面談で経営の数字を一緒に読み解くことをサービスの中心に置いています。毎月の損益・資金繰り・税額をfreee×bixidで翌月10日までに見える化し、月1回のオンライン面談で「次の一手」を一緒に決めます。スポット相談ではなく、経営判断のパートナーとして伴走することが、当事務所の顧問契約の本質です。
当事務所が選ばれる3つの理由
当事務所は価値を重視する経営者向けの事務所です。「単に申告書を作るだけの事務所」と「経営判断のパートナーとなる事務所」では、提供する価値が大きく異なります。以下の3つの軸で経営者をサポートします。
- freee×bixidで月次の数字を見える化 — 翌月10日までに損益・資金繰り・税額を確定。年1回しか会わない事務所と違って、毎月の経営判断に使える状態をつくります。
- 月次面談で経営判断のパートナーになる — 月1回のオンライン面談で「次の一手」を一緒に決めます。設備投資・採用・融資・節税より資金確保の判断を、数字をもとに行います。
- freee公式4つの認定資格を取得した(全国69事務所のみ・大阪府内8事務所のみ)。メインボリュームは月額40,000〜80,000円帯のお客様が多い事務所です — freeeの最新機能を使いこなして経理工数を最小化。申告書作成だけでなく、経理の自動化と経営判断の両方をワンストップで提供します。他事務所より料金が高くなる場合がありますが、それを上回る経営の透明性と伴走価値をお届けします。
大阪での会社設立手続きについては、大阪で会社設立をサポートする税理士サービスおよび会社設立から税務届出までの全手順ガイドもあわせてご参照ください。
まとめ
法人化(法人成り)を検討する際のポイントを整理します。
- 法人化の目安は年間利益(所得)800万円超——所得税率が23%から33%へ跳ね上がり、法人格のメリットがコストを上回る
- 判断軸は売上ではなく利益——業種によって利益率が大きく異なるため、実際の所得額で判断する
- 社会保険料の増加を含めてシミュレーションする——利益1,000万円なら社保込みで年54万円〜の節税効果が目安(当事務所試算・令和8年度税制基準)
- 800万円未満でも法人化が有効なケースがある——BtoB取引・採用強化・信用力向上が課題なら早期法人化を検討する
- 設立タイミングと役員報酬の設定が節税効果を決める——事前のシミュレーションなしに進めると節税効果が半減する
- 法人化後の経理自動化がなければ節税メリットを活かしきれない——freee導入で月次決算の早期化と経営の見える化を実現する
法人顧問契約のプランと料金の詳細は経営計画見える化プランの顧問契約詳細でご確認いただけます。
本記事の執筆事務所
蟹山昇宏税理士事務所(近畿税理士会・登録番号138494号)
代表税理士は近畿大学大学院で所得税法を担当
大阪市中央区安土町3-4-5 本丸田ビル4F(本町駅徒歩3分)
freee公式4つの認定資格を取得した(5つ星・リアルタイム記帳・会計上級エキスパート・人事労務エキスパート)大阪府内わずか8事務所(3.69%)
bixider認定事務所・認定経営革新等支援機関
顧問契約先40社・freee導入支援実績120社以上(顧問外含む)
よくある質問(FAQ)
Q1. 個人事業主はいくらから法人化すべきですか?
年間の所得(利益)が800万円を超えたタイミングが目安です。所得税率が23%から33%へ跳ね上がり、役員報酬・社宅・退職金といった法人だけが使える節税手段のメリットがコストを上回るタイミングだからです。利益500万円以下では法人化のメリットはほとんど出ません。
Q2. 売上と利益、どちらで法人化の判断をすればいいですか?
利益(所得)で判断してください。業種によって利益率が大きく異なるため、売上だけで判断するのは正確ではありません。IT・WEB系は利益率60〜70%になることがある一方、飲食業は5〜10%程度です。売上1億円でも利益が少なければ急ぐ必要はありません。
Q3. 法人化後の顧問料はどのくらいかかりますか?
当事務所のメインボリュームは月額40,000〜80,000円帯(決算料は標準で250,000〜350,000円帯)です。freeeを完全に使いこなしている新設法人など最小構成の場合は月額25,000円〜・決算料180,000円〜からご対応もあります。他事務所から切り替えると料金が上がるケースもありますが、月次の数字の見える化と経営判断の伴走という価値で選んでいただいています。正確な費用は業種・規模・経理状況によって変わりますので、ページ末尾の相談フォームからお問い合わせください。
Q4. 消費税の課税売上1,000万円を超えたら法人化すべきですか?
消費税の課税判定と法人化の節税効果は別の話です。インボイス制度に登録済みであれば、消費税の基準だけで法人化を焦る必要はありません。法人化の主な理由は所得税率の壁と節税手段の拡大にあります。
Q5. アフィリエイトやYouTube収益でも法人化は有効ですか?
有効です。経費が少なく利益率が高い業種は、800万円以下でも法人化の効果が出やすい傾向があります。広告収益やアフィリエイト収益は売上≒利益に近くなりやすいため、年収(売上)500〜600万円台から法人化を検討しはじめる価値があります。
Q6. 法人化の手続きにかかる費用と期間は?
費用は株式会社で最低20〜24万円〜、合同会社で6〜10万円〜が目安です。登記完了まで2〜4週間かかります。その後、税務署・都道府県・市区町村への届出、法人口座開設まで含めると実際に事業を法人として動かせるまで1か月程度を見込んでください。
Q7. 法人化のタイミングで税理士を選ぶべきですか?
法人化のタイミングで税理士を決めることをおすすめします。設立前から役員報酬の設定・設立月の決定・消費税の免除設計を行わないと、初年度から大きな節税機会を逃す可能性があります。設立後に税理士を変更することは可能ですが、初年度からの最適設計が節税効果を最大化します。
Q8. 初回相談で強引に契約を勧められませんか?
初回30分のオンライン面談は情報提供と相性確認の場です。後日メール1本で「他事務所にする」「もう少し検討する」とお伝えいただければそれで完結します。当事務所は価値で選ぶ経営者にご相談いただいているため、無理に契約を取りに行く必要がありません。話してみて違うと感じたら、そのままお別れで構いません。
著者情報
蟹山 昇宏(かにやま のりひろ)|税理士
近畿税理士会所属(登録番号138494号)。蟹山昇宏税理士事務所 代表。近畿大学大学院で所得税法を担当。大阪市中央区安土町3-4-5 本丸田ビル4F(本町駅徒歩3分)。freee公式4つの認定資格を取得した(5つ星・リアルタイム記帳・会計上級エキスパート・人事労務エキスパート)取得事務所として大阪府内わずか8事務所(大阪府217事務所中3.69%)の一つ。bixider認定事務所・認定経営革新等支援機関。顧問契約先40社・freee導入支援実績120社以上(顧問外含む)。freee株式会社公式サイト掲載事例あり(月次2日完結の生産性事例・2024年取材)。中小企業の節税・freee導入・資金調達を一貫して支援。「わかりやすく、ていねいに」がモットー。
うちの場合はどうなのか、税理士に聞いてみる
価値を重視して税理士を選びたい方のご相談をお待ちしています。当事務所のメインボリュームは月額40,000〜80,000円帯(決算料は標準で250,000〜350,000円帯)です。記事だけでは「自分のケース」までは分からないですよね。初回30分のオンライン面談で、現状を聞いた上で「この場合こうなります」と具体的にお伝えします。話してみて違ったら、そこで終わって構いません。
1営業日以内にお返事します。電話派の方は 06-6786-8119(平日9:00〜17:00)。


